教授からのご挨拶

ご挨拶

藤原靖弘

2016年4月より大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学教授に就任致しました。小林絢三先生、荒川哲男先生の築き上げてこられた消化管の教室の伝統を継承して、さらに発展すべく努力していきたいと思います。また兄弟関係になります肝胆膵病態内科学(河田則文教授)と密に連携して消化器内科学を盛り上げて行きたいと思います。教室の目標と抱負を述べて、ご挨拶申し上げます。

教室の目標

就任後の最初の医局会で教室員に、方針として「ポジティブ思考でいこう」を掲げました。これは私自身がこれまで感じてきたことであり、困難な時もいかなる逆境もポジティブに考えていくことで事態が好転することが多かったからです。もう一つの方針として「研究のすすめ」を挙げました。教室員には、どのようなテーマであっても良いので、症例から疑問に感じたことや最近のトピックスから、より一層深く追求する姿勢を大切にしてほしいと考えています。

留学について

これまで、教室員の留学は主に基礎研究のための海外留学がなされてきました。私も今思えばかなり無謀とも思える基礎研究もあまり分かっていなかった28歳の時に1年間カリフォルニア大学アーヴァイン校(ロングビーチVAメディカルセンター)に基礎研究で留学しました。当然業績は残せなかったですが、米国での1年間の生活は日米の考え方の違いを経験できたことや同じ研究室に留学していた研究者や医師など多くの人々との出会いはとても貴重な体験でした。私は教室として、留学を強く推進する方針とします。これは海外のみならず、国内の臨床に関する留学も含めてです。就任以降、3人の先生が国内外に留学もしくは予定となっています。留学する先生には知識や技術の修得のみならず、留学生活を大いにエンジョイして頂き、幅広い人間関係の構築や消化器内科医のみならず人としての成長を切に願っております。

教育について

卒前教育として、荒川前教授より取り組み、引き継いできた英語教育を継続していきます。これは回診前カンファレンスや回診、クリニカルクラークシップまとめのプレゼンテーション(Broken English Case Conference、この取り組みについては荒川先生が記載された記事をお読みになった方もおられると思います)を英語で行うものです。現在、大学、医学部ではグローバル化・国際交流が強く推進されており、多くの診療科で英語でのカンファレンスや回診が取り入れられています。また毎年様々な国から学生が実習にきており、一昔前では考えられないほど多くの外国人学生を学舎内で見受けられます。クリニカルクラークシップ各班に一人ぐらいはとても流暢な英語を話す学生もいますが、やや消極的な学生が2週目には思い切って、英語で質問できるようになる成長ぶりをいつも楽しみにしています。

卒後教育はこれまで通り、患者の立場にたった内科医、さらに消化器内科・消化器内視鏡分野の専門医を育成する方針を続けておりますが、個々の上級医の診療がやや細分化されすぎている傾向にあったことから、研修医や3年目には幅広く疾患を経験できる体制としました。2018年度からは新専門医制度が本格的に開始されます。内科に関しても経験必須症例、剖検、ローテーションなどの問題はありますが、専門医制度に関する内科連絡会教授部会や講師などで構成される実務部会でも十分に討論されております。大阪市立大学消化器内科ではこれまで通り関連病院をローテートしながら、後期臨床研修中に内科専門医が取得でき、さらに消化器内科医として当初から専門性を学べるプログラムができております。ご安心して入局頂ければと存じます。

大学院生に関しては、各グループでの討論や教室全体のリサーチカンファレンスに加えて、学年毎に1カ月に1回程度は進行状況や問題点を話し合う機会を設けています。

研究について

これまで、研究グループは上部消化管、下部消化管、内視鏡と分かれていました。今後、大学院生には少なくとも一つの基礎研究テーマと2,3の臨床研究テーマを並行して行うこととしました。基礎研究の方は各教員がそれぞれ独自のテーマで行う体制としました。

さて、私自身はもちろん、これまでGERD関連疾患の研究を続けてきたことから、この分野の研究は自身で続けていきたいと思っています(これまでの自身の研究と将来については大阪市医学会雑誌2016、第65巻、P19-25にまとめましたので、機会があれば一読ください。文章のみなので眠れない日には良いかもです)。

また教室全体の研究テーマとしてF-PROJECTを立ち上げました。これは図に示すように新たな疾患や内視鏡所見を見つけるプロジェクトです。
私自身も長年内視鏡をしていて、初めて遭遇するような所見を年に一度は経験することがありますが、悪性ではないことから、そのままにしていることが多かったです。学会などで同様の所見の発表を聞いた後で、そういえば見たことがあったなあと残念に思うこともありました。特に強く感じたのは最近研究テーマの一つとしている好酸球性食道炎です。新しい内視鏡所見や疾患は、とても運が良い先生や眼力の強い先生が見つけることが多いと思いますが、ふと考えてみますと、私が30年間で初めてみた所見でも、裏を返せば30人の内視鏡医のうち1人は年間遭遇する可能性があるということになります。このような経験は内視鏡施行件数にもよりますが、おそらく年間2例ぐらいはあると思いますので、教室員約150人で約300例、10年間で3000例あれば、きっと類似所見は見つかるはずです。数例集まれば新しい所見、疾患として提唱することができると思います。「新たな内視鏡所見や新しい疾患を見つけよう!」をスローガンに強力に進めてまいりたいと思っています。

臨床について

臨床に関しては、早期消化管癌の内視鏡治療ESDチーム、胆膵の内視鏡治療チーム、炎症性腸疾患(IBD)チーム、小腸内視鏡チーム、臨床腫瘍チーム、機能性消化管疾患チームがそれぞれの分野で日々活躍していただいています。消化器内科の分野では内視鏡が中心にはなりますが、設備的にも大学と関連病院との差が少なくなってきています。新しい技術をいち早く導入することの重要性を感じております。一方、機能性消化管疾患は未だ解明されておらず、薬剤も十分な効果を認めるものが少ないのが現状です。創薬につながるような臨床研究や内視鏡を用いた消化管機能評価や機能障害に対する治療法など考案していきたいと思います。さらには難病である炎症性腸疾患や好酸球性消化管疾患などの希少疾患の新しい治療法の開発を目指したいと思います。

学生時代、卒業後はどの専門分野に進もうか悩んだ時期も少しありましたが、本当に消化器内科を選んで良かったと思います。

今後、若い先生の育成とともに、教室員一丸となって最良の医療の提供を行うとともに新しいことにチャレンジしていきたいと思います。

 

2017年2月

START TYPING AND PRESS ENTER TO SEARCH