NSAID起因性小腸傷害に対するコルヒチンの有効性に関する臨床試験

NSAID起因性小腸傷害に対するコルヒチンの有効性に関する探索的臨床試験

非ステロイド性抗炎症薬 (non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) は痛みを抑えたり解熱のためによく使用されるお薬ですが、胃・十二指腸に粘膜傷害を起こすことが知られています。近年カプセル内視鏡という小腸を観察することのできる内視鏡の登場によって、NSAIDsは小腸にも高頻度に粘膜傷害を起こすことがわかってきました。小腸粘膜傷害は腹痛や出血の原因になることがあり、さらに重症になると頻度はまれですが穿孔を起こす可能性もあります。NSAIDsによる小腸傷害には胃・十二指腸傷害に使用する酸分泌抑制剤が有効でなく、現在有効な治療法はまだ確立されていません。

我々はマウスモデルを用いてコルヒチンというお薬がNSAID起因性小腸傷害を抑制し、その抑制作用は主にNLR family, pyrin domain-containing 3インフラマソームの活性化阻害によるものであることを証明しました (Otani K et al. Sci Rep, 2016)。これにより、我々はヒトにおいてもNSAIDsによる小腸傷害に対してコルヒチンが治療薬の候補となると考えています。今回行う臨床試験はNSAIDsによる小腸傷害に対してコルヒチンを用いた治療が有効で安全に使用であるかどうかを検討するためのものです。

対象となるのは3ヵ月以上継続してNSAIDsを内服されており、今後3ヵ月間はNSAIDsを内服される予定の20歳以上の患者さんです。患者さんの同意を得てからスクリーニング検査とカプセル内視鏡検査を行い、適格性ありと考えられた場合に試験に登録させていただきます。登録後、コルヒチン0.5 mg錠を1回1錠、1日2回朝・夕食後に8週間服用していただきます。コルヒチンは長年痛風発作の緩解および予防に使用されており、用量を遵守すれば安全性や認容性は確認されています。コルヒチンのNSAID起因性小腸傷害への使用は保険適応外使用となりますが、消化器疾患ではすでにベーチェット病に対してこれまで適応外使用されており、この用量はベーチェット病に対して実際に日常診療で投与されている用量です。服用1週間後に外来を受診していただき、副作用と考えられる症状が出ていないか、問診と診察を行います。服用8週間後にも外来を受診していただき、症状の問診、診察、血液検査、尿検査を行います。内服終了後に2回目のカプセル内視鏡検査を行い、治療効果を確認します。2回目のカプセル内視鏡検査後に外来を受診していただき、カプセル内視鏡の排出を確認し、症状の問診、診察、血液検査、尿検査を行います。排出されたがどうかわからない場合には、腹部レントゲン検査を行います。問題なければこの時点で試験終了とします。万一コルヒチンによる副作用やカプセル内視鏡の滞留が生じた場合には、試験終了後も外来診察 (必要に応じて入院加療) を継続し、適切に対応させていただきます。

本試験によって予測される利益 (効果) としては、コルヒチンの内服治療によりNSAIDによる小腸傷害を治癒させて、腹痛、出血や穿孔の危険性を軽減させることができます。また本試験によって予測されるリスク (副作用) としては、コルヒチンの副作用として頻度の高いものに消化器症状 (下痢、悪心・嘔吐、腹痛) があり、その他にも血球減少、肝・腎機能異常、過敏症 (全身の掻痒、発疹、発熱) などがあります。特に下痢が生じた場合には、整腸剤や止痢薬を用いて速やかに対応を行います。それでも下痢が続く場合には試験を中止します。またカプセル内視鏡に関連するリスクとして、消化管に狭窄がある場合にはカプセル内視鏡が滞留してしまう可能性があります。もしカプセル内視鏡の滞留が生じた場合には、ダブルバルーン内視鏡による回収を行いますが、小腸の深いところに停滞し内視鏡が届かない場合には外科手術によって回収します。

研究責任者:大谷 恒史

所属・職名:大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学 講師

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